資料名 | クシャン朝貨幣4 |
クシャン朝、カニシカⅠ世の発行(紀元後2世紀中頃)した仏陀立像の銅貨と同形のもの。オモテ面
(写真左)は王の立像。向かって右側の銘文はコインの縁に沿って上から下に●【ΑΟ】ΚΑとあり、
左側の銘文は下から上に【ΝΗ】●ΚΙとある。(【 】は摩滅のため見えない。●はPに似た形状の文字)
銘文全体は、●ΑΟ(shao王)ΚΑΝΗ●ΚΙ(kane^shkiカニシカの)とある。 ウラ面(写真右)は仏陀立像。向かって左端にカニシカの紋章があり、紋章と立像の間に銘文がある。 その銘文には上から下にCΑΚΑΜΑとある。向かって右側の銘文は下から上にΝΟ【ΒΟΥΔΟ】 とある。【 】の部分は欠けて見えない。銘文全体は、CΑΚΑΜΑΝΟ(sakamanoシャカムニ)ΒΟ ΥΔΟ(boudoブッダ)とある。ギリシア文字のΣ(s)はCと記される。文字●(sh)はバクトリア語の舌葉音に 類する摩擦音を表記するために新たに考案された文字。伝統的なギリシア文字のリストにはない。 さて、向かって左銘文のCΑΚΑΜΑの、Κの下に短い縦線「|」があり、Μの上には点「、」のよう なものがある。ギリシア文字にとってこれは不要である。同様の記号のようなものはGobl(1984)に掲載 された写真にもある(下段写真参照)。このようなことは偶然には起こり得ない。これが起こる理由とし て次の3点を挙げることができる。 ①カニシカⅠ世の当時、同一の金型によりコインが打ち出され別々に伝わり今に至った。 ②近代以降金型が作られ、それによって打ち出されたコインが別々に加工され流布した。 ③Gobl(1984)の写真もしくは実物に基づいて金型が作られ、それによって打ち出されたコインが流布した。 ①の可能性は皆無ではないが低い。おそらくは②もしくは③であろう。 参考文献 Cribb,J.(1980)Kaniska's Buddha Coins―The Official Iconography of Sakyamuni&Maitreya. The Journal of the International Association of Buddhist Studies1980(3.2):79-88. Gobl,R.(1984)System und Chronologie der Munzpragung des Kusanreiches.Wien,1984. (文責:吉池孝一2013.9.10) |
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資料記号 | g2k06 | |
文字/言語 | ギリシア文字/バクトリア語 | |
材質/形態 | 銅/円形コイン(打刻) | |
重さ | 17.0g | |
大きさ | 最大径26.6mm、厚さ:4.8mm | |
管理/所蔵 | 古代文字資料館/個人蔵 |