トップページブラーフミー文字>亀茲五銖

資料名亀茲五銖  2言語併用の小型の方孔円銭。5世紀〜7世紀に亀茲で鋳造されたものらしい。亀茲は現在の タリム盆地北側の庫車(クチャ)県に相当。玄奘『大唐西域記』(7世紀前半)の屈支国(亀茲) の条に「貨幣には金銭・銀銭・小銅銭を使用している」とある「小銅銭」がこれであろうか。
 写真左には漢字漢文で「五」(右)と「銖」(左)、即ち「五銖」とあるが摩滅していてよく 見えない。かろうじて「五」の古体文字が確認できる。
 写真右はブラーフミー文字トカラ語であるらしい。下は数字の「50」、上はよく分からないが 「銖」の1/10に当たる単位ではなかろうかとのこと。
以上は蘇曄・劉玉榮1998(『古幣尋珍』文物出版社)を参照。

 なお、漢字と非漢字が併用されているところは、漢字とカローシュティー文字が併用された 「新彊馬銭」と似ている。もっとも亀茲五銖は方孔円銭であり、この点は一層中国的。異な る文字による2言語併用貨幣の系譜は、カローシュティー文字とギリシア文字が併用された、 クシャン朝貨幣やインドスキタイ貨幣やインドグリーク貨幣などインド西北の貨幣様式に 遡る。同一様式は、ずっと時代が下った13〜14世紀イルハン朝などのウイグル式モンゴル文 字とアラビア文字が併用された貨幣に現れ、さらに時代が降った清朝の新彊紅銭にみること ができる。新彊紅銭では漢字・満洲文字・アラビア文字が併用される。
資料記号bz2k01
文字/言語ブラーフミー文字・漢字/トカラ語・漢語
材質/形態銅/方孔円銭
重さ1.7g
大きさ径:18.67mm、厚さ:1.84mm
管理/所蔵古代文字資料館/個人蔵