満洲文字を知る
(1)満洲文字とは何か?

(2)満洲文字の構造

(3)満洲語について

(4)満洲語の文献

(5)無圏点満洲文字

(6)文字表

(7)基本参考文献

(8)モンゴル語を記した満洲文字

(9)漢語を記した満洲文字---1.文献



(2)満洲文字の構造

 満洲文字はセムのアルファベットの流れを汲む、ソグド文字の子孫です。 「ソグド文字」→「ウイグル文字」→「モンゴル文字」→「満洲文字」とわずかづつ 形を変えて来ましたが、基本的な構造は変わりません。左から右への縦書きで、単語ごとに 分かち書きをします。ソグド文字のもとになったアラム文字は右から左への横書きでしたが、 ソグド文字以降は徐々に縦書きへと変わりました。全体が90度左へ回った訳ですが、 どうしてそうなったのかは謎です。あるいは漢字の影響かとも考えられますが、果たして 中央アジアのソグド文字にそれほど漢字が影響を与え得たかどうかは不明です。

 ソグド系文字の大きな特徴の一つは、アラビア文字などと同様に、語頭、語中、語末で 文字の形が違うことです。例えば母音の「o」を表す文字は、語中ではラテン文字の「d」のような 字形ですが、語頭ではそれに屋根のついた形、そして語末では平仮名の「の」のような字形になります。 次の二つの語で確認して下さい。(例は河内良弘著『満洲語文語文典』(京都大学学術出版会、1996年)より)
    
 前にも掲げた清末コインの銘文では、 左から2行目「yoso-i(原則の)」の2番目の文字が母音「o」の語中形、4番目の文字が「o」 の語末形です。

 また、同じ子音でも母音の組合せによって形の変わるものも多くあります。したがって、満洲文字に よって書かれた文章を実際に読むためには、「子音+母音」という音節単位で文字の形状を覚えなければ なりません。河内良弘著『満洲語文語文典』(京都大学学術出版会、1996年)には、「子音+母音」の 全ての組合せが、それを含む 語の実例とともに提示されていて、非常に便利です。

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