16世紀古文書から見たアステカの世界観

ベルナルディーノ・デ・サアグン

「ヌエバ・エスパーニャ概史:七巻 原住民の占星術について」

第十二章 新しい火"を手に入れた後行ったことについて

日本語訳:石原麻衣子

1. 言い伝えによると新しい火である大きな焚き火を作った後、メキシコやほかの村からやってきた偶像神の司祭たちは、その焚き火から火をとり、それを軽快で偉大な走者たちに託して送った。なぜなら村では人々が火を待っていたからだった。彼らはそれを松で作ったたいまつにともし、どこの村にもいち早く火がともるようにみなたいへん急いで競い合って走った。

2. そのたいまつで火を運ぶと、メキシコの人々はそれをウィツィロポチトリの神殿に運び、石灰と小石でできたろうそく立てに灯し、偶像の前に置き、そこに樹脂の香を沢山たいた。

3. 彼らはそこから火を取り、メシーカ人と呼ばれた神官たちの部屋に運び、そのあと偶像神の司祭たちの部屋にも運んだ。そしてそこから街のすべての人々のところにも運んだ。

4. その火を手に入れるためにやってきた多数の人々の数は目を見張るものである。そして人々はその火でそれぞれの地域に大きな焚き火を沢山作り、盛大な祭りをおこなった。

5. ほかの村の神官たちも同じようなことをしていた。一番速く走るものが松のたいまつを握り大急ぎで競い合ってその火を運んだので、火はほとんど一瞬のうちに村につき、それから全ての村人たちが火を取りにやってきた。

6. すべての村に多くの火が灯される光景は目を見張るものであり、まるで日中のようだった。まず始めには例の偶像神の司祭の住む家に火が灯された。