16世紀古文書から見たアステカの世界観

ベルナルディーノ・デ・サアグン

「ヌエバ・エスパーニャ概史:七巻 原住民の占星術について」

第五章 風について

日本語訳:颯田美智子

1.この人々は風をケツアルコアトルと呼ばれる神のせいにした(帰属させた)、つまりそれはほとんど風の神である。この神の命により世界の4つの部分に風が吹く、と人々が言う。第一番目の風は東方のあたりから吹き、その方向とはトラロカンと呼ばれる地上の楽園があるといわれるもので、その風はトラロカヨトルと呼ばれていた。カヌーで水上を進むのを妨げるほど猛烈な風ではなかった。

2.第二番目の風は、地獄があるといわれる北のあたりから吹き、そのためミクトランパ・エエカトルと呼ばれる。これは、地獄のあたりから吹く風という意味である。この風はすさまじく、人々はたいへん恐れた。その風が吹くとき、カヌーで水上を進めないし、航海するものはみな、その風が吹くときに恐れ、また危険性が高いので、できる限り大急で水から出るのである。

3.第三番目の風は、チウアピピルティンと呼ばれる神々の住むところだといわれる西のあたりから吹く。その風はチウアトランパ・エエカトルかチウアテカヨトルと呼ばれていて、女性が住む所から吹く風という意味がある。この風はすさまじくはないが冷たく、寒さで震えさせる。この風が吹くと航海するにはよい。

4.第四番目の風は、南方あたりから吹き、ウイツナウアと呼ばれる神々がいたという場所から吹く風という意味がある、ウイツランパ・チェカトルと呼ばれている。この場所で吹く風はすさまじく、航海するには危険である。その風はとても激しく、何度か木を引き抜いたり、塀を破壊したり、水上に大波を立てる。水上で風が出くわすカヌーは水の底に投げつけられるか、高く打ち上げられてしまう。それは北風と同じくらいすさまじい。

5.様々な名前により、稲妻か雷光は名付けられる。これはトラロケかトラマかスケによっておきるものとされる。雷光、稲妻、雷鳴を鳴らし、好きなものは誰でもそれらで傷つけていたと言われていた。