16世紀古文書から見たアステカの世界観

ベルナルディーノ・デ・サアグン

「ヌエバ・エスパーニャ概史:七巻 原住民の占星術について」

第六章 雲について

日本語訳:杉本亜希枝

1. 原住民は雲や雨をトラロカン テクトリと呼ばれる神に帰属していると考えていた。その神はほかにも多くのものをその支配下に従え、それらはトラロケやトラマカスケと呼ばれていた。

2. これらはトウモロコシやインゲンマメのような体に必要なものすべてを育て、また大地に育つすべてのものが生まれるために雨を降らせると考えられていた。人々がこの神とその従者に対して祝祭を行うとき、その祭りの前、トラマカスケと呼ばれるものたちは4日間断食をした。彼らはカルメカクと呼ばれる神殿の中に住んでいた。断食が終わり、彼らの中にもしなにか失敗したものがいたら、神の名誉にかけてその者たちを虐げた。それは湖の中に引きずりいれて、溺死寸前まで泥や水で踏みつづけるという方法であった。

3. カルメカクと呼ばれる家でなにか容器を壊したり、あるいはそれに似たような失敗をしたものは捕らえられて、その祭りの日に罰を与えるために拘束していた。しかし時には、捕われた者の両親が、我が子を釈放させ、溺死させないためにと、雌鶏、毛布、あるいはなにか他のものをトラマカスケに献上することもあった。

4. もし事前に自由にされず捕らわれのままであったなら、この方法で虐待されたものを、その両親も、親類もあえて助けようとはしなかったし、そのものたちのために話そうともしなかった。そして人々は彼らをひどく虐待し、ほとんど死人のように水辺に放り出したものだ。それから両親は彼らを引き取り、家につれて帰った。

5. この祭りでは、すべてのマセグアレスはお米のように料理したトウモロコシを食べた。また、トラマカスケは通りを歌い踊りながら歩いた。一方の手には未熟なトウモロコシの茎を待ち、もう一方には柄のついた鍋を持っていた。このように、料理したトウモロコシをもらえるように請求しながら歩くことによって、すべてのマゼグアレスがトラマカスケの持っているトウモロコシ用の鍋に投げ入れてくれたのである。

6. この神々は雲、雨、ひょう、雪、雷、そして稲妻を作ったといわれている。

7. 空のアーチ(虹)は石造のアーチのようであるが、いくつかの色がみえる。虹が現れるときというのは平静のしるしである。しかし、虹がリュウゼツランの上に出るときはそれをしおれさせるといわれてきた。また、虹が何度も出るときは今に水が枯れようとするしるしであるともいわれていた。