満洲文字を知る
(1)満洲文字とは何か?

(2)満洲文字の構造

(3)満洲語について

(4)満洲語の文献

(5)無圏点満洲文字

(6)文字表

(7)基本参考文献

(8)モンゴル語を記した満洲文字

(9)漢語を記した満洲文字---1.文献




(7)基本参考文献

 ここでは満洲語を読む際に参考となる基本文献のうち、日本語で読めるものを中心に紹介することにします。

(1)概説
 まず満洲語及びツングース諸語についての概括的な認識を得ようとするなら、次の三つの概説が良いでしょう。
  @池上二良「トゥングース語」,市川三喜・服部四郎編『世界言語概説』下巻,研究社,1955年(2000年再刊)。
  A池上二良「ツングース諸語」,『言語学大辞典』世界言語編第2巻,三省堂,1989年。
  B津曲敏郎「満州語」,『言語学大辞典』世界言語編第4巻,三省堂,1992年。
 池上氏の書いた@Aのエッセンスは『満洲語研究』(汲古書院,1999年)にまとめられおり参照に便利です。ただし、『世界言語概説』には山本謙吾「満洲語文語形態論」なども収められているので今なお有用です。

(2)文法書
 満洲文字のローマ字転写法や満洲語文法体系の概説、及び簡単な読みものなどを網羅した文法書としては、次の三著を勧めます。
  @河内良弘『満洲語文語文典』,京都大学学術出版会,1996年。
  A河内良弘・清瀬義三郎則府『満洲語文語入門』,京都大学学術出版会,2002年。
  B津曲敏郎『満洲語入門20講』,大学書林,2002年。
 @は世界で唯一とも言える満洲語の総合的な文典です。Aは@を簡略化したもの。 この二著はいずれも転写法の解説が詳細で、練習問題も豊富にあります。Bは文法の説明が コンパクトでわかりやすく、初学者が取り組みやすいように工夫されています。

(3)辞典
 満洲文字のローマ字転写法に慣れたら、上の文法書を頼りに、辞書を引きながら満洲語の文献を読み解いていくことになります。辞典としては次の三書があれば良いでしょう。
  @羽田亨『満和辞典』,京都,1937年(1972年復刻,国書刊行会)。
  A福田昆之『満洲語文語辞典』,FLL,1987年。
  B胡増益主編『新満漢大辞典』,新疆人民出版社,1994年。
 @は「(4)満洲語の文献」の項で説明した『御製増訂清文鑑』(1770年)をベースにしたもので、 歴史書・公文書の読解に役立ちます。Aは戯曲や小説などの翻訳から取られた用例が豊富にあります。 中国で出たBは現在のところ最も語彙数の多い辞典です。
 なお、中国語の意味から満洲語を引きたい場合には、『御製五體清文鑑』(1790年頃)の日本語 訳である田村実造・今西春秋・佐藤長編『五体清文鑑訳解』(上下巻,京都大学内陸アジア研究所, 1966/68年)が便利でしょう。

 (この項の執筆にあたり津曲敏郎『満洲語入門20講』の「補講・主要参考文献」を参考にしました)


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