資料名 | 羅氏集存9 |
羅振玉『隋唐以来官印集存』民国五年(1916年)の二十六葉オモテに収められた元代
パスパ文字官印の印影。背刻の拓本はなく、巻頭の目録には「移相哥大王印 山陽丁氏蔵今不知
所在 無紐背更刻一印式至奇 背印字三行首行蒙古書次行梵書末行之寶二字篆書反文」とある。 ■印影。左行縦にγoŋ【皇】-d・ei【帝】とあり右行縦に「之寶」とある。これより縦に左 から右に向かって書かれていることがわかる。中央はサンスクリット「吉祥」であるという。 日本の漢字仮名交じり文のように異種文字を混用したものとなっている。 この印につき、照那斯圖1980(「八思巴字篆体字母研究」,『中国語文』1980年4期,307-309,269頁) はd・ei【帝】の「・」と「e」の部分を連結線を屈曲させたものと解しdi【帝】とする。元代の『蒙古字韻』 では「帝」をdiとする。もっとも「e」のみを連結線とみてd・iとしたり、屈曲した連結線は認めず d・eiとする可能性も提示するが、いずれも漢語音の表記としては不可であるとする。 パスパ文字で文を綴る場合、何語の文章の中であれ、借用語は借用元の言語の表記法に拠るのが原則 であるから漢語「皇帝」の「帝」はdiとするのが正しい。しかしながら、「寶」という漢字の場合、 通常のパスパ文字漢字音はb(a)vであるが、モンゴル語訛りの発音で「b・o」(=「bo・o」[bo:]現代語では広いo)と綴る 場合もあり、そのような音形を『蒙古字韻』やパスパ字碑文の中に見ることができる。あるいはd・ei 【帝】も他言語に借用された発音であるかもしれない。その場合、d・eiのeはいかにも不自然であるか ら、この部分は連結線を屈曲させたものと見て、d・iとすべきか。d・iとしたならば、パスパ文字の 正書法によりdi・iとなり、その発音は[di:]という長母音ということになる。もっともこれは資料の 裏づけのない想像である。 (文責:吉池孝一2011.10.18) |
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資料記号 | ipz2h01 | |
文字/言語 | パスパ文字・梵字・漢字/漢語・サンスクリット語・漢語 | |
材質/形態 | 古書中の写真 | |
重さ | ** | |
大きさ | 縦12.5cm×横12.5cm | |
管理/所蔵 | 古代文字資料館/個人蔵 |