16世紀古文書から見たアステカの世界観

ベルナルディーノ・デ・サアグン

「ヌエバ・エスパーニャ概史:七巻 原住民の占星術について」

第一章 太陽について

日本語訳:伊藤由起

1. 太陽は,輝く,照らす,自ら光を放つ,といった特質をもっていて,熱く、褐色で醜い人の体や顔を焼き,汗をかかせる。

2. ナウイオリンといわれていた世紀では,かつて年に一度太陽の祭りが行われていた.祭りの前には,祭りの掟として、4日間にわたる断食が行われていた。この太陽の祭りでは,コパルという香と耳からとった血が、4回奉納されていた.一回目は日の出に,もう一回は正午に,3度目は日暮れ時に,最後は日が落ちるときに捧げられた。太陽が出る時には、「すでに太陽は,仕事をはじめた,今日は何なのか、なにが起きるのか?」と、そして、太陽が沈む時には,「太陽は仕事を,なすべきことを終えた。」と言った。

3. 太陽が姿をあらわすとき,時にそれは血の色に見え,またあるときは白みがかって見える.また時には,病的な色をしている時があるが、それは、闇や雲が太陽の前に現れているせいである。

4. 日食のときは、太陽は色のない状態になる。それは太陽が不安になり,当惑して、また揺れ動き,また身悶えしている、そしてはるかに黄色くなるように見える。人は日食を見て、混乱して非常に恐れる、それから女達は声をあげて泣き,男達は,口を手で持って傷つけながら叫び声をあげる。つまりいたるところで大声が出され,悲鳴が上がっていた。そして頭が白く,顔が白い人が探し出され,太陽に生贄として捧げられていた。

5. また,戦争の捕虜も生贄として捧げられた.捕虜達は自分の耳の血で汚した。またリュウゼツランの刺で耳に穴を開けて,柳の枝、又はそれに似たものを通した。そしてすべての神殿では,歌を歌い,大音響を起こして演奏した。

6. 人々は、こういった;「もし太陽がすっかり食されたなら,太陽が照らすことはこれから一度もないだろう,永遠の闇になって,悪魔達が降りてきて私達を食べるだろう。」