トップページ

『有坂秀世研究−人と学問−』

「収録著作」        「序」


編集後記


 いま、すべての原稿の整理を終えて印刷製本に回す段階に至り、心から安堵している。ここでは、編集の経緯と 補足的な事柄を簡単に記しておきたい。

 出版計画をスタートするにあたり我々が合意したことは、所収の諸篇について、既刊の印刷物をそのまま版下と して使用することであった。そこで、まず関係の諸機関に対し書面で計画の概要と趣旨を説明するとともに、版下と して使用することの可否について問い合わせたところ、幸いなことにすべての機関から快諾を得ることができた。 この場を借りて、以下の各位に厚くお礼を申し上げたい(カッコ内は刊行物)。

 日本語学会(『国語学』)、首都大学東京都市教養学部人文・社会系(『人文学報』)、國學院大學 総合企画部広報課(『國學院雜誌』)、大修館書店(『言語』)、早稲田大学中国文学会(『中國文學研 究』)、長崎外国語短期大学国際コミュニケーション学科(『国際文化入門V』)、三省堂(『有坂秀 世言語学国語学著述拾遺』)、同学社(『トンシュエ』)、日本中国語学会(『中国語学』)、野村先生受章記念 刊行会(『野村正良先生受章記念言語学論集』)、明治書院(『日本語研究諸領域の視点』)、内山書 店(『中国語』)

 なお、『人文学報』と『中國文學研究』の掲載論文につき使用許可を得る際には、我々の先輩である佐藤進、落合守和、 古屋昭弘の三先生より格別のご配慮を賜り、また出版に関するアドバイスもいただいた。併せて謝意を表したい。

 その後、慶谷先生にコピーをお送りして初校・再校と朱を入れていただき、我々はそれに基づいて修正を加え、 印刷用の原稿に仕上げていく作業を行った。修正は主として誤植および字体・仮名遣いに関するものであるが、特に 新たなコメントが加わった場合には、「補」として注の最後に組み入れた。また、参照ページは、原則として原載誌の ページの横に【本書○○頁】として注記した。

 本書所収の諸篇は、その一ページ一ページがすべて手作りである。我々は、まず掲載誌や抜刷からコピーを取って レイアウト用紙に貼り付け、慶谷先生の朱筆に基づいて切り貼りで訂正を加え、再度コピーを取ってページを印刷し、 修正液で汚れを消し、最後に先生に見ていただくためのコピーを取る、といった一連の作業を、一篇ごとに繰り返した。 本書のために慶谷先生とやり取りした書簡は、半年間で五〇通を超える。我々は、こうした地味で愚直な作業を通じて、 慶谷先生の授業を改めて受け直したと言えるかも知れない。そして、作業のために週に一回か二回吉池氏の研究室に集い、 一方で手を動かし、編集上の問題について議論しつつも、慶谷先生の授業風景や、かつての都立大中文研究室の思い出を 語り合ったひと時は、何物にも代えがたい贅沢な時間だったように思う。

 慶谷先生を直接の指導教員としたわけではなく、門弟としては文字通り末席を汚しているに過ぎない身ではあるが、 先輩諸氏とともにこのたびの出版を喜びたい。最後に、この手作りの書物をともに編んだ吉池孝一氏と中村雅之氏、 そして何よりも著者である慶谷壽信先生に、深甚の感謝を申し上げる。

二〇〇九年八月末日
竹越 孝