初期外国語学習書

『[官許]英吉利単語篇』

 

        

    概要

  • 開成所/明治三年刊/蔵田屋清右衛門(賣捌)

 

        

    解説

     本書は、幕末期から始まった(蘭学の伝統を継承した)英学における英語学習のために、開成所([旧]蕃書調所)で慶応二年(1866)に『英吉利文典』(本資料No.4)をはじめとして刊行されたその他三種類の初習学習用教科書の一つである――『英語階梯』(綴字書)、『英語訓蒙』(読本)とならぶ。
     本書の扉には、Book of Instruction for the Children, vol. 1 (first edition, anno 3 Mei-zi) と記載されていることから、素読本など続編のあることも分かる。総76頁の小冊子ながら、収録語彙は1,490語を数え、日常語の(the) tableから始まり、固有名詞の(the) Vistulaにまで及ぶ――現行の中学校学習指導要領に定める基本語数1,200語程度を300語も凌駕する。収録単語の配列はアトランダムで、上掲の教科書シリーズの「読本」と対応しているかどうかは不詳。
     なお、本学のほかに、東京大学、東京外国語大学、東京学芸大学、筑波大学、香川大学の図書館に本書が所蔵されていることがCiNii Booksで確認できる。また、早稲田大学の所蔵本については、同大学古典籍総合データベースからデジタル画像(表紙装丁)を楽しむことができる。さらに、国立国会図書館近代デジタルライブラリーでは内容も確認できる。

    【参考】
    池田哲郎 「英語教科書」『日本の英学100年(明治編)』(研究社,1968年)
    高梨健吉 『日本英学史考』(東京法令出版,1996年)
    高梨健吉・出来成訓 『英語教科書の歴史と解題』(大空社,1993年)
    松村幹男 『明治期英語教育研究』(辞游社,1997年)
    茂住實男 『洋語教授法史研究』(学文社,1989年)

    【文責】大森裕實

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